お客とこうあん先生の会話
「家を建てるという大切な仕事」
知人である大野社長 編著


お客 住宅雑誌などを読むと、家づくりには三つの方法があると書かれています。頼む相手が三つあるというのです。ハウスメーカーと建築家、そして地域の工務店の三つですね。
先生 方法が三つある? 僕はそうは思いませんね。だって現場で家を建てるのは大工さんなんだから。どんな家だって、実際に柱を立てて釘を打つのは大エさん。だから「どこに頼めばいい家か建てられますか?」と聞かれたときには僕はこう答えます。もし 自分がいいと思う家があるのなら、それを見せてほしいと。で、メーカーのカタログを見せる人がいる。そして「こんな感じがいいと思いますが、センスの古い大工さんじゃ無理だと思うんです」なんて言う。でも、その人が言う「新しいセンス」とは色と形の問題でしょう。材料や継ぎ方さえ指定すれば、まともな大工さんならつくれますよ。もし小さな工務店に頼むと倒産するおそれがあって心配だというなら、保証会社というのがありますから、そこに保証させればいい。そうやって施主さんが直接大工に家の建築を頼めば、中間マージンが要らなくなる。その分、基礎や構造にお金をかけてもらえるんです。ここにいる青木新棟染に家づくりを頼んだとしても新棟梁が建てるわけじゃない。新棟梁が自分の分身としてバックアップしている大工の棟梁が責任を持ってつくるんです。
お客 そうか……。わが家を建てたのはメーカーではなくて、現場の大工さん。考えてみれば当たり前のことですよね。そういえばメーカーの営業担当の人は、うちはよそのメーカーと違って自社の社員が責任を持って建てますと言っていましたが、実際に社員だったのは週一回ぐらい現場を見回る現場監督だけで、工事は下請けの工務店任せでした。たまに現場を見に行くと、いつも頭に手ぬぐいを巻いた大工さんがこつこつと作業をしていましたが、わが家の出来がいいも悪いも、その人の腕にかかっていたというわけですね。
先生 そうですよ。メーカーはプランをつくったし、材料も支給しただろうけれど、実際にあなたの家を建てたといえるのは、その大工さんなんです。
お客 工事をしている間は離れたところに住んでいましたから、大工さんが働いている平日に現場を見る機会があまりなかったんですね。それで、大工さんとはゆっくり話をしたこともなかったし、顔も名前も覚えてない。
お客 でもプレハブ住宅やユニット住宅などは違うでしょう? 何といっても工業化住宅と言われるくらいなんですから、少なくとも構造体の工事ぐらいはメーカーの技術者がやるんじゃないんですか。
先生 そういうことを言っているから困るんだなあ。どんな工法でつくるにせよ、一棟の家を請け負うのは大工の棟梁なんです。だからこそ腕のある棟梁を見つけなければならないんです。それはプレハブでもユニットでも同じことですよ。たとえきちんと構造
計算をして規格住宅を設計したり、工場で精度の高い部材をつくっても、それだけでは家は半製品でしかない。家の数だけ条件の異なる敷地に、責任を持って家を建てられるのは、それを請け負った棟梁なんですから。もし欲しいものがメーカーのプレハブであっても、棟梁は自分で選ぶのが望ましいんです。

続く